—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—
萩原 朔美さんは1946年生まれ、2023年11月14日に紛れもなく77歳を迎えた。喜寿、なのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません!
連載 第26回 キジュからの現場報告
前橋に居る時間がだんだん長くなってきた。というのも、人混みが嫌になったからだ。前橋から湘南新宿ラインで新宿に着くと、いきなり大混雑に巻き込まれる。夜だろうが朝だろうが関係ない。地方の人との距離感に慣れてしまうと、都会の濃密さにうんざりしてくるのだ。予感として、私は今後は地方都市に住むかも知れない。
私は、故郷がない。若い頃、正月に周りが帰省してしまうと、何時も寂しい気持ちがした。
だから、これからの子供は、物心ついたら故郷を自由に決められるのがいい。そうすれば、地方も好かれるように努力するだろう。100年後には、国もそうなるといい。どこの国民になるか、喜寿になると自由に決められるのだ。そうなれば、各国は住みたくなる国作りに精を出すだろう。
そうだ。喜寿になると、どの県を故郷にしてもよく、気軽に移住出来るようなおもてなし制度が理想だな。それは来年からでもいい。(笑)
第25回 生前葬でお披露目する「詩」
第24回 我を唱えず、我を行う
第23回 老いは戯れるもの
第22回 引きこもりの愉しみ
第21回 楽しい会議は老化を防ぐ
第20回 記録はアートになりたがる
第19回 老いが追いかけてくる
第18回 気がつけばおばんさん気分
第17回 新しい朝が来た、希望の朝だ♪
第16回 年齢とは一筋の暗闇の道
第15回 今こそ<肉体の理性>よ!
第14回 背中トントンが懐かしい
第13回 自分の街、がなくなった
第12回 渡り鳥のように、4箇所をぐるぐる
第11回 77年余、最大の激痛に耐えながら
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。