子どもも魅了した
アダルトでセクシーな
お姉さん
第14号を飾っていただいたのは、星さんと同じく東宝出身の女優、水野久美さん。水野さんと言えば、東宝特撮映画で育った世代にとっては『怪獣大戦争』のX星人の間諜であり、食べると自らもキノコになってしまう怪キノコ・マタンゴの恐怖を描いたホラー映画『マタンゴ』だろう。当時子どもの僕たちは東宝特撮映画に夢中になっており、学校でも子どもが観る映画として認められていたようだが、後年見直してみると、大人も楽しめる映画であることがよくわかる。水野さんのクールな美貌は、宇宙人の役に説得力をもたらしていたような気がする。お相手願った映画評論家の樋口尚文さんにとっても、水野さんとの最初の遭遇は東宝特撮映画であり、「私の初恋の人は水野久美さんでした」と言い切る。そして、共著『女優水野久美 怪獣・アクション・メロドラマの妖星』が上梓された。
表紙の撮影場所は閉館を間近に控えた映画館<銀座シネパトス>で、樋口さんも企画に携わった「水野久美映画祭」も実施されたお2人にとって縁のある名画座である。シネパトス・ラスト・ロードショーとして上映され、全編を通して銀座シネパトスで撮影された樋口さん監督の『インターミッション』には、多くの映画人たちが出演しているが、水野さんもそのお一人。撮影所育ちの女優には、やはり映画館がよく似合う。最近ではテレビドラマ「やすらぎの刻 道」でも、往年の大女優役で出演していたが、樋口さんが言うところの「銀幕の向こうの非日常で輝いている遠く美しい存在」ぶりは、健在だった。
おっとりした
育ちの良さと
歯切れの良さが魅力
第15号の表紙は十朱幸代さんに飾っていただいた。この日の衣装はヒョウ柄がアクセントとして効果的なコーディネートで、後日この表紙を見たファッションデザイナーの友人が、「ヒョウ柄をすばらしく上品に着こなしている」と、わざわざ電話をかけてよこした。これこそ、十朱幸代という女優の質ではないかと、頷くものがあった。映画、舞台、テレビドラマで数多くの役柄を演じる中には、生きるためには手段を択ばないような、いわゆる汚れ役と言われるような役もあったはずだが、十朱幸代という女優からは、その役柄の向こうに知性・品性が見られるのだ。お相手を務めていただいたジャーナリストの鳥越俊太郎さんも、賛同してくださった。「品性があって、凛としたところもあり、ひたむきな感じも伝わってくる、日本の女のあり方のようなものを示している女優さん」と評する。そして、「いつまでも現場にい続けたい」という互いの共通点には、「同志のような感情が芽生えた」と感激していた。
子ども時代の映画が娯楽の原点だったという鳥越さんと、映画談義で盛り上がった十朱さん。長谷川一夫、萬屋錦之介、勝新太郎、渥美清など、錚々たる数多のスター俳優たちと共演した中で、強烈な印象として残っているのは石原裕次郎だったと言う。日活映画の『青春とはなんだ』『黒い海峡』『殺人者を消せ』『敗れざるもの』などの共演作が浮かんだ。