23.11.16 update

リリースから50年、今なお心に響く名曲「五番街のマリーへ」(ペドロ&カプリシャス=髙橋真梨子)を歌いながらN.Y駐在の男たちは泣いていた

 さて、阿久悠の詩は、マリーという若い頃の恋人を想って、友人に様子を見てきてほしいと頼むことから始まっている。
 「実はな、若い頃一緒にくらしたマリーという娘が、いま、どうしているか、幸せなのか、誰かの嫁になっているのか、くらしぶりはどうなのか。ちょっと訳ありでな、若気の至りで悲しい思いをさせちまったんだ。それが気がかりでなぁー。五番街に住んでいた頃は、長い髪してな、可愛い娘だったんだ。頼むよ、五番街はすぐ近くだけどオイラにとっちゃぁちょっと遠い所でさ、古い街だから誰か噂を知っていると思うんだ、幸せそうなら寄らなくていいよ、自分で行けりゃ苦労はしないぜ、そこんとこ頼むよ、察してくれよ」
 こう〝意訳〟してみると、なぜか映画『男はつらいよ』の車寅次郎の口舌になってしまう。「マリー」は浅丘ルリ子の「リリー」なのかもしれない。あるいは映画『幸せの黄色いハンカチ』の高倉健が、妻(倍賞千恵子)の元に近づけば近づくほど車から降りようとせず、下を向いてばかりいるシーンと重なる。切ない男の気持ちは、ニューヨークで働く男たちにも通じ、合唱しながら涙が伝ったビジネスマンもいた。「五番街の~」で歌う恋の記憶は心の深いところにあって、折に触れて表に出てくるものなのだろう。その都度、彼女が今幸せに暮らしているか、困ったことになっていたりはしないかと気になるのである。

 この楽曲をスロースタートとは言ったが、「ジョニイへの伝言」の大ヒットの余勢を駆って、大ヒットしているし、オリコンチャートでは「ジョニィ~」同様にロングヒットとなってシングル売上枚数は21.2万枚を記録している。また、発売から42年が経過した2015年の「第66回NHK紅白歌合戦」で髙橋真梨子はソロで歌唱している。リリースされて50年、超が付くロングヒット曲として、歌われてきた。髙橋真梨子の歌唱力もますます盛んで、デビュー50周年を迎えてなおライブコンサートの舞台で堂々と歌い続けている。
 文:村澤 次郎 イラスト:山﨑 杉夫

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