23.12.21 update

〝創立80周年記念スペシャルシリーズ〟仲代達矢、平幹二朗、市原悦子、加藤剛、栗原小巻ら名優を輩出した演劇集団「劇団俳優座」100周年への大いなる助走

◆80周年「伝統と革新の共生」を理念に◆

 その一方で、巨大になった劇団ならではの悩みも多く、俳優座劇場や地方での公演には限りがあり、なかなか活躍の場を得られない若い演劇人たちは俳優座を飛び出し、新しい劇団を旗揚げしていく。青年座をはじめ、仲間、新人会(現:朋友)、三期会(同:東京演劇アンサンブル)などが誕生したほか、佐藤信や斉藤憐、串田和美、吉田日出子らの養成所出身者で結成された自由劇場は「アングラ演劇」と呼ばれる新しい演劇運動を起こしていく。その中で94年の「座・新劇」公演が忘れられない。木下順二『風浪』、秋元松代『村岡伊平治伝』、宮本研『美しきものの伝説』と、新劇の財産的演目3本を5劇団が合同して上演した。骨太のドラマ、簡潔で無駄のない美しいせりふ、エネルギッシュな俳優の演技は、「これぞ、新劇」の力量を示す濃い内容で、当時のトップランナーだった蜷川幸雄や野田秀樹が演出した舞台に勝るとも劣らない演劇の魅力を解き放った。

▲1971年の初春を飾った千田是也演出の『オセロ』。オセロを仲代達矢、デズデモーナを河内桃子、イアーゴを中野誠也が演じたほか、大塚道子、近藤洋介も出演。仲代は千田是也の演技に感銘を受け、52年に俳優座養成所の4期生として入所、同期には宇津井健、中谷一郎、佐藤慶、後に東宝のアクション映画で活躍する佐藤允らがいた。55年に俳優座に入団し、イプセン作『幽霊』のオスワル役で初舞台を踏み、新劇新人賞を受賞している。74年には『リチャード三世』『友達』で紀伊國屋演劇賞・個人賞を、75年には『どん底』『令嬢ジュリー』で、毎日芸術賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞している。79年に、劇団俳優座を退団した。

 この94年には半世紀にわたって代表を務めた巨星・千田是也が他界する。若手演出家の伸び悩みや演劇の多様化で劇団は曲り角にたたされたが、本公演と並行して稽古場を使った「ラボ公演」で実験的な芝居を試み、演技研究生の募集を再開して活動を再活性化させた。今世紀に入り、演出の眞鍋卓嗣がトルストイの『ある馬の物語』(2011)や劇作家・横山拓也とコンビを組んだ『首のないカマキリ』(18)、『雉はじめて鳴く』(20)、『猫、獅子になる』(22)などで高い舞台成果を残したほか、俳優の森一が「修復的司法」を題材にしたオーストラリア演劇の『面と向かって』(21)、『対話』(23)を演出して新生面を切り開くなど、意欲的な創作劇、翻訳劇の上演で活気を取り戻し、2022年には第56回紀伊國屋演劇賞の団体賞受賞へと結びつけた。

1 2 3 4 5

映画は死なず

新着記事

  • 2024.05.10
    背中トントン懐かしい ─萩原 朔美   

    第14回 キジュからの現場報告

  • 2024.05.10
    練馬区立美術館「三島喜美代─未来への記憶」展 観賞...

    応募〆切:5月31日(金)

  • 2024.05.10
    <特集>帰ってきた日本文化の粋 ─ 今、時代劇が熱...

    文=米谷紳之介

  • 2024.05.09
    吉田修一原作×大森立嗣監督が『湖の女たち』で再びタ...

    5月17日(金)全国公開

  • 2024.05.09
    東宝映画『ゴジラ』のヒロインに抜擢され、その後俳優...

    東宝から俳優座へ。

  • 2024.05.09
    松田聖子、田原俊彦らアイドル全盛期の昭和56年、西...

    アイドル全盛期のスター

  • 2024.05.09
    92歳の大村崑、映画『お終活 再春!人生ラプソディ...

    5月31日(金)全国公開

  • 2024.05.02
    『ヒットマン』のザヴィエ・ジャン監督の最新作『FA...

    応募〆切:5月13日(月)

  • 2024.05.02
    〝私をカンヌに連れてって〟くれたエドワード・ヤン監...

    文=河井真也

  • 2024.05.02
    人々はどうやって映画を愉しんできたのか、鎌倉市川喜...

    4月13日[土)~7月7日(日)

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

information »

ロマンスカーミュージアムが3周年記念イベントを開催!

イベント ロマンスカーミュージアムが3周年記念イベ...

4月10日(水)~5月27日(日)

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!