表紙で振り返る「コモレバ」の10年


第三回

早田雄二の写真で蘇る思い出の女優たち

文=二見屋良樹(「コモレバ」編集長)

第21号から30号までは、引退して撮り下ろしがかなわない、あるいはすでに鬼籍に入られてしまったが、昭和の映画や舞台を語る上で見過ごすことのできない忘れられない10人のすばらしき女優をご紹介しています。
いずれも写真家早田雄二さんが撮った写真で、そこに写る女優たちは、ため息がでるほどフォトジェニックでした。映画雑誌などを通して国内外の輝けるスターたちを撮った早田雄二さんの写真には時代を超えて人々を魅了し続ける女優たちの永遠が切り取られています。

 写真家・早田雄二さんは雑誌「映画の友」や「映画ファン」の専属カメラマンとして数々のスター・ポートレイトを撮った。マリリン・モンロー、イングリッド・バーグマン、フランク・シナトラなど海外のスターたちも多く撮影しているが、女優を美しく撮ることを写真家としての矜持とした早田に、女優たちは絶大なる信頼を寄せていた。人々の記憶に残る女優のポートレイトが、早田の撮ったものだったということも少なくない。早田の告別式で葬儀委員長を務めた写真家・大竹省二さんは「美しい女優に囲まれて最高に格好が良い生き方をした男である」と弔辞に述べている。早田雄二写真シリーズとして表紙を飾った10人の女優たちをご紹介しよう。


日本映画界
最大のスター女優
原節子

第21号 原節子
(2014年9月)
©Yuji Hayata/JDC

 早田雄二シリーズのトップバッターは原節子。崇高なまでの美しさから〝永遠の処女〟と謳われた原節子だが、思い出す一枚の写真がある。白い雪景色の中、黒いマントを纏って凛凛しい立ち姿の写真だ(「コモレバ」21号で紹介)。これは1951年に黒澤明監督『白痴』の撮影時に撮られたもので、早田雄二の手による一枚だった。女優のポートレイトを代表する一枚と言ってもいい写真だろう。早田自身も「ちょっとエキゾチックなものが出来あがって、原節ちゃんを撮った中でも、好きな写真のひとつです」とコメントしている。

 原節子は小津安二郎監督作品を代表するヒロイン女優であり、数々の名監督の作品にも出演し大女優となるが、『忠臣蔵』での大石りく役を最後に42歳で引退し、その後公の場に姿を見せることは一切なく〝伝説の女優〟とも称された。2015年に95歳で生涯の幕を閉じた。今一度、早田雄二の原節子評をご紹介しよう。「それはきれいな人でした。あんなきれいな女優さんはもう出てこないんじゃないですか。しかも美人特有の気取ったところがない。明るく、気さくで、人間的な人でした」。日本映画界の神話の中に生きる原節子の名は、永遠に人々の記憶の中に刻まれるであろう。

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