20.09.28 update

表紙で振り返る「コモレバ」の10年

世界に誇る
国際派女優
京マチ子

第24号 京マチ子
(2015年6月)
©Yuji Hayata/JDC

 日本が生んだ国際的大女優、京マチ子。京さんは、ある時期から一切取材インタビューなどを断り、映画やテレビドラマの撮影や舞台など、女優の仕事以外では人前に出ることをしなかった。出版社の社長からの依頼でも、親しい山本富士子さんが仲介してのお願いでも、京さんが首を縦に振ることはなかったという。弊誌でも願わくばインタビュー、撮影をお願いしたかったが、叶わぬ望みであった。そこで、早田雄二撮影による写真を数点セレクトし、京さんにお送りした。京さんが表紙に選んでくださった写真は、どこかハリウッド女優を思わせるような私が提案した写真だった。気持が通じたようで嬉しかった。グラマーという言葉は今では死語になっているようだが、当時日本女性には珍しい堂々たるプロポーションの京マチ子にはグラマーという形容が使われることが多かった。『羅生門』『地獄門』『雨月物語』などで〝グランプリ女優〟とも呼ばれた京さんだが、個人的には、色街で男を手玉に取る芸者を演じた『偽れる盛装』が印象深い。

 京マチ子論を書いてくださったのは、ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』などで知られる映画監督の原一男さん。原さんは京マチ子を「体を張って生きるオンナの苦悩を演じる女優」と評し、『羅生門』『浮草』『地獄門』『夜の蝶』『赤線地帯』などを挙げてくださった。京マチ子が演じた映画での役柄を通して、原監督と同じような印象を京さんに抱く人は多いかもしれない。だが私には、取材の折に山本富士子さんが「京さんほど家庭的な女性はいないと思います」と語った言葉が印象に残る。京さんは生涯独身だった。2019年、京さんの死去に際し、多くの映画人たちが改めてその偉業を讃えた。インタビューでお会いした浅丘ルリ子さんも「共演してみたかった」と言っていた。

完璧な美貌で
多彩な〝おんな〟を
見事に演じる女優

第25号 新珠三千代
(2015年9月)
©Yuji Hayata/JDC

 なぜだか子どものころから新珠三千代が好きだった。新珠三千代が好きだなんていう子どもは周囲には一人もいなかった。みんなが好きなのは、吉永小百合であり、内藤洋子であり、酒井和歌子だった。だから新珠三千代が好きだと宣言するのは、なんとなくはばかられ、心の内におさめていた。小学生のとき見たテレビドラマ「氷点」での養女役の内藤洋子につらく当たる冷たい表情の美しさ、映画『女殺し油地獄』で、油にまみれながら中村扇雀(現・坂田藤十郎)の刃から逃げ回る恐怖の表情を湛えた美しさに、魅せられてしまったらしい。そもそもいずれも小学生が見るような作品ではなかったが、私の両親はそんなことはおかまいなく、なんでも見せてくれた。今、そのことに深く感謝している。実際に会って、インタビューしてみたかったが、21世紀最初の年に新珠さんは死去した。

 新珠さんの魅力を語ってくださったのは、俳優の利重剛さん。一度見たら忘れられない顔だという、利重さんの言葉を借りると、「卵のような美しい輪郭に、つんとしたあご。印象的な瞳に、綺麗な弧を描いた眉、小さく可憐な鼻、あどけなさを湛えた唇の形。額の形や、首筋のラインまで、そのパーツひとつひとつすべてが完璧な美しさで、それが見事に調和している」と言う。さらに「完璧な美貌と圧倒的な演技力の両方を兼ね備えたという意味で、僕は、新珠三千代を、日本のオードリー・ヘプバーンだと思うのだ」と、べた褒め。利重さんも子どものころから新珠ファンだったに違いない、と勝手に同士だと思っている。それにしても、男たちは好きな女優をオードリー・ヘプバーンにたとえる傾向があるようだ。

1 2 3 4 5

こちらの記事もどうぞ
映画は死なず

新着記事

  • 2024.03.01
    今から準備、青森県内の美術館5館によるアートフェス...

    青森県で現代美術を楽しむ!

  • 2024.03.01
    金塊強盗からスーパースターへ!信じられないような実...

    応募〆切:3月25日(月)

  • 2024.03.01
    森美術館 ブラック・アートと日本の「民藝」の融合、...

    4月24日(水)~9月1日(日)

  • 2024.03.01
    なぜ世田谷区はアーティストの街になったか。「世田谷...

    山口蓬春、植草甚一、舟越保武らも

  • 2024.02.29
    美空ひばり、成城の通りで歌う! 〝成城ロケ映画〟の...

    文=高田雅彦

  • 2024.02.29
    『ブギウギ』の淡谷のり子のドレスアップと重なる燕尾...

    東映映画『国定忠治』の名文句が忘れられない

  • 2024.02.28
    小林武史、三上博史、山口智子、種田陽平……映画『ス...

    文=河井真也

  • 2024.02.28
    破天荒なドイツのラッパーのサクセスストーリー!『女...

    3月29日(金)より全国順次公開

  • 2024.02.27
    芝居はボケ防止になるという話─萩原 朔美の日々 ...

    楽屋での雑談もまた楽し

  • 2024.02.27
    森ビルの「ヒルズ街育プロジェクト」が文部科学大臣賞...

    森ビルの街づくりが表彰される!

特集 special feature 

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

information »

new 森ビルの「ヒルズ街育プロジェクト」が文部科学大臣賞を受賞

都市 森ビルの「ヒルズ街育プロジェクト」が文部...

森ビルの街づくりが表彰される!

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives

PEOPLE frontline Vol.1

PEOPLE frontline Vol.1

PEOPLE frontline Vol.2

PEOPLE frontline Vol.2
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!