表紙で振り返る「コモレバ」の10年

世界に誇る
国際派女優
京マチ子

第24号 京マチ子
(2015年6月)
©Yuji Hayata/JDC

 日本が生んだ国際的大女優、京マチ子。京さんは、ある時期から一切取材インタビューなどを断り、映画やテレビドラマの撮影や舞台など、女優の仕事以外では人前に出ることをしなかった。出版社の社長からの依頼でも、親しい山本富士子さんが仲介してのお願いでも、京さんが首を縦に振ることはなかったという。弊誌でも願わくばインタビュー、撮影をお願いしたかったが、叶わぬ望みであった。そこで、早田雄二撮影による写真を数点セレクトし、京さんにお送りした。京さんが表紙に選んでくださった写真は、どこかハリウッド女優を思わせるような私が提案した写真だった。気持が通じたようで嬉しかった。グラマーという言葉は今では死語になっているようだが、当時日本女性には珍しい堂々たるプロポーションの京マチ子にはグラマーという形容が使われることが多かった。『羅生門』『地獄門』『雨月物語』などで〝グランプリ女優〟とも呼ばれた京さんだが、個人的には、色街で男を手玉に取る芸者を演じた『偽れる盛装』が印象深い。

 京マチ子論を書いてくださったのは、ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』などで知られる映画監督の原一男さん。原さんは京マチ子を「体を張って生きるオンナの苦悩を演じる女優」と評し、『羅生門』『浮草』『地獄門』『夜の蝶』『赤線地帯』などを挙げてくださった。京マチ子が演じた映画での役柄を通して、原監督と同じような印象を京さんに抱く人は多いかもしれない。だが私には、取材の折に山本富士子さんが「京さんほど家庭的な女性はいないと思います」と語った言葉が印象に残る。京さんは生涯独身だった。2019年、京さんの死去に際し、多くの映画人たちが改めてその偉業を讃えた。インタビューでお会いした浅丘ルリ子さんも「共演してみたかった」と言っていた。

完璧な美貌で
多彩な〝おんな〟を
見事に演じる女優

第25号 新珠三千代
(2015年9月)
©Yuji Hayata/JDC

 なぜだか子どものころから新珠三千代が好きだった。新珠三千代が好きだなんていう子どもは周囲には一人もいなかった。みんなが好きなのは、吉永小百合であり、内藤洋子であり、酒井和歌子だった。だから新珠三千代が好きだと宣言するのは、なんとなくはばかられ、心の内におさめていた。小学生のとき見たテレビドラマ「氷点」での養女役の内藤洋子につらく当たる冷たい表情の美しさ、映画『女殺し油地獄』で、油にまみれながら中村扇雀(現・坂田藤十郎)の刃から逃げ回る恐怖の表情を湛えた美しさに、魅せられてしまったらしい。そもそもいずれも小学生が見るような作品ではなかったが、私の両親はそんなことはおかまいなく、なんでも見せてくれた。今、そのことに深く感謝している。実際に会って、インタビューしてみたかったが、21世紀最初の年に新珠さんは死去した。

 新珠さんの魅力を語ってくださったのは、俳優の利重剛さん。一度見たら忘れられない顔だという、利重さんの言葉を借りると、「卵のような美しい輪郭に、つんとしたあご。印象的な瞳に、綺麗な弧を描いた眉、小さく可憐な鼻、あどけなさを湛えた唇の形。額の形や、首筋のラインまで、そのパーツひとつひとつすべてが完璧な美しさで、それが見事に調和している」と言う。さらに「完璧な美貌と圧倒的な演技力の両方を兼ね備えたという意味で、僕は、新珠三千代を、日本のオードリー・ヘプバーンだと思うのだ」と、べた褒め。利重さんも子どものころから新珠ファンだったに違いない、と勝手に同士だと思っている。それにしても、男たちは好きな女優をオードリー・ヘプバーンにたとえる傾向があるようだ。

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