20.09.28 update

表紙で振り返る「コモレバ」の10年

清潔で気風がいい
女も惚れる
テレビ界の大スター

第28号 池内淳子
(2016年6月)
©Yuji Hayata/JDC

 池内淳子さんの死は何だか唐突だったような印象がある。昨日までテレビで見ていたはずなのに、という感じで訃報はキツネにつままれたようで、ピンとこなかった。あれから10年経つが、CSのTBSチャンネルで昔の、単発時代の日曜劇場も繰り返し放送されていて、代表作とも言える「女と味噌汁」シリーズをはじめとする実に多くの作品に池内淳子は出演している。池内淳子が、テレビ黄金期の昭和のドラマを支えた存在として、テレビの歴史と共に語られ続ける女優であることを実感する。出演ドラマがいずれも高視聴率となったことから〝20パーセント女優〟との異名もとり、まさにテレビが生んだ大女優と言えよう。日曜劇場の最多出演俳優ということである。

 池内さんの数多くの主演ドラマを演出した鴨下信一さんは、池内さんの和服姿について語る。和服は、日本女性の〝隠す美〟の代表のように言われるが、女優・池内淳子にとっては、和服は攻撃武器だというのだ。映画『けものみち』で映し出される、池内淳子のうなじを下りて、そこからのぞく白い背中を映した映像は、「おそろしく肉感的な、というよりいまふうに〝肉食女子〟といったほうがいい感覚」だと言う。そして、池内淳子の帯の着け終わりの帯締めを結ぶ写真は、まるで〝女の出陣式〟のようだと解説する。なるほど、役柄もそうかもしれないが、女優としても、数々の和服姿を武器にその地位を確立させたと言えるかもしれない。舞台にも精力的に出演し、帝国劇場、明治座、芸術座などの舞台に立ち、『三婆』と『月の光』で菊田一夫演劇賞大賞に輝いた。主演だけではなく、助演者としても作品の重要な役割を果たし、「手を抜かず、しかもほどが良くて真実味の深い演技には感心するばかりだった」と鴨下さんは評している。

女優・北原三枝と
裕次郎夫人
2つの魅力

第29号 北原三枝
(2016年9月)
©Yuji Hayata/JDC

 石原裕次郎との結婚を機に女優を引退し、映画界から去って行った北原三枝。かつての写真には、その抜群のプロポーションの良さから、水着姿も多く撮られている。日劇ダンシングチームの5期生でもある。初めて銀座の早田スタジオを訪れた真っ白のワンピース姿の北原三枝を見て、「この人は大女優になる」と早田雄二は瞬時に確信したという。早田の見込み通り、新生日活のエース女優として活躍することになる。個人的には『青春怪談』『陽のあたる坂道』の北原三枝が好きだ。今回は、あえて水着姿以外の写真をセレクトすることにした。クールで知的で都会的で、カッコがいい。ボーイッシュでもあり、エレガントでもある。そんな印象を受けた一枚を表紙に選んだ。現在は石原まき子として石原プロモーションの代表取締役会長を務めるかつての北原三枝さんご自身も、石原プロモーションのスタッフの方々も、「なんて綺麗な写真」と、喜んでくださったようである。

 北原三枝讃歌は、作詞家であり、作家のなかにし礼さんにお願いした。まず『君の名は』(第二部)でアイヌの娘役で登場した北原三枝の美しさには、こんな美女がどこにいたのかという驚きで、その美しさにド肝を抜かれたと告白。そして『狂った果実』で見せた素晴らしい水着姿と脚線美。映画は北原三枝の魔性を秘めた美しさがあって初めて成立していると語る。そして、裕次郎さんとの出会いを通じて感じた、「裕さんは優しかった。がその裕さんの優しさを裏打ちしていたのはマコ夫人ではないか」と石原まき子さんを讃えている。

脇役の顔ですよ、
と自身を分析する
カッコいい女優

第30号 淡路恵子
(2016年12月)
©Yuji Hayata/JDC

 まずは表紙の写真を篤とご覧いただきたい。ゴージャスな毛皮の手触り、白い絹の長手袋に洒落た長い煙管。まるでハリウッド女優の雰囲気。こんなポーズが様になる女優って、果たして今の芸能界にいるだろうか。中ページで紹介した写真は、仕立てのよさそうなシンプルな白いシャツに細めのマンボズボンにサブリナシューズで、煙草をくゆらせる一枚。すばらしくカッコいい。さりげない衣装だけに、女優の資質が問われる写真だろう。当時の人気者を総動員したようなNHKの連続ドラマ「若い季節」で淡路恵子という女優を知った。銀座にあるプランタン化粧品という会社の女社長役だった。子ども心に、この人にある種のムードを感じた。ハイクラウンというちょっと高級な大人向けのチョコレートのコマーシャルにも出ていた。「男嫌い」というドラマでは越路吹雪、岸田今日子、横山道代と四姉妹の次女を演じていた。すごい顔ぶれの四姉妹に男たちはたじたじだった。スタイリッシュでクールでゴージャスなムードの源には品性という泉があった。

 2011年に一度だけ淡路さんとお会いしたことがあった。雑誌「それいゆ」「ひまわり」の編集長などで知られた中原淳一さんの特集を組むにあたりインタビューを受けていただいたのだ。待ち合わせ場所の喫茶店に現れた淡路さんは白いシャツにジーンズ、そして真っ赤なショート丈のトレンチコートだった。催眠術にかけられたようにフリーズした。淡路恵子と向い合せでコーヒーを飲んでいる自分に酔った。あの独特な色香の声と話し方で、しかもすばらしくやさしく質問に答えてくださる。そして、〝喫煙ポーズが一番絵になる女優〟と言われたその煙草のシーンを目の前で確認した。フランス文学者で作家の奥本大三郎さんは、「人生の酸いも甘いも知り尽くした大人の女」と淡路恵子という女優を分析してくださった。出会いから3年後、淡路さんは逝ってしまったが、私の心にはあの日のカッコいい淡路恵子が、今も深く刻まれている。

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