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第40回【キジュを超えて】僕から私への転換 

—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—

萩原 朔美さんは1946年生まれ、2025年11月14日で79歳、紛れもなく喜寿を超えているのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の特別館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません! 

連載 第40回 キジュを超えて


 この文章は、自分のことを「私は」と書いている。

 しかし、30歳までは、「僕は」と書いていた。その時は「僕は」が自分に対しての一番自然な呼びかけだった。

 21歳ぐらいの時だったか。ある時寺山さん(寺山修司)から、

「僕から私に変わる時期がある。それが文章の転換期だぞ」

 と言われた。その時は「僕」以外考えられなかったから、

「そんなもんですかねー」

 などと、返事した。

 30歳を過ぎた時、「僕」が急に恥ずかしくなった。子供じみているように感じたのだ。


▲写真左は、「演劇実験室天井桟敷」創立のメンバーの16人。九條今日子さんは前列右端。後列左から2番目が筆者。一人置いて横尾忠則。その隣は寺山修司(1967年)。写真右は、左から九條、20代の筆者、寺山


 試しに「私は」と書くと、文章もすんなり進む。「僕」よりも自分を客観視して描写できる気がした。あっ、と思った。寺山さんの言ってた転換期はこれかあ、と理解した。

 最近、「私」から、もう一度別の言い方に変える時期がくるのかも知れない、と考えている。「私は」が少し気取っているように感じる時があるのだ。いよいよ人生最終章だから、ここは一つ「私」を脱出してみると、新しい転換があるかも知れないのだ。まあしかし、俺、ワイ、手前、ワテ、自分、、別の言い方が思いつかない。(笑)

▲「演劇実験室天井桟敷」の団員49名。横尾忠則、宇野亞喜良、カルメン・マキ、丸山明宏(現・美輪明宏)、小椋佳ら錚々たるメンバー。筆者は左上。美青年ぶりが写真からも伝わってくる。



第39回 わが職人技?
第38回 今、会いたい人
第37回 タネとネタ
第36回 行き止まりはない
第35回 ひとりカフェの愉悦
第34回 オブジェは語る
第33回 まだまだ学べ
第32回 命のデータ
第31回 目の奥底
第30回 老いも若きも桜の樹
第29回 僻んではいません
第28回 私の年齢観測
第27回 あゝ忘却の彼方よ
第26回 喜寿を過ぎて
第25回 生前葬でお披露目する「詩」
第24回 我を唱えず、我を行う
第23回 老いは戯れるもの
第22回 引きこもりの愉しみ
第21回 楽しい会議は老化を防ぐ


はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の特別館長、金沢美術工芸大学客員名誉教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。



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